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【コスモスポーツ】
コスモスポーツは、1967年5月に2シータークーペモデルとして発売された。世界初の実用・量産ロータリーエンジンの搭載車であった。 なお、世界初のロータリーエンジン搭載車は旧NSUヴァンケル社(現・アウディ)のスパイダーである。そこに搭載されたロータリーエンジンは、ロータリーエンジン特有の多くの課題が未解決まま量産されており、いわば「見切り発売」であった。また、このロータリーエンジンは、単一ローターのエンジンであった。これらに対し、コスモスポーツに搭載された10A型エンジンは、それらの課題を克服して量産に耐えうるものであった。このため10A型エンジンは、世界初の実用・量産ロータリーエンジンである。また、10A型エンジンは、多気筒ロータリーエンジンとしても世界初であった。
ロータリーエンジンの特性は、それまで各種のロータリーピストンエンジン理論において証明されていた。しかし、100年以上の理論的蓄積にもかかわらずロータリーエンジンは量産されるには至っていなかった。このため、10A型エンジンの搭載車であるコスモスポーツは、ロータリーエンジンを量産車のエンジンとして最初に搭載した記念すべきスポーツカーといえる。
1968年8月には、東洋工業は、mazda110Sの名でコスモスポーツを擁してニュルブルクリンクで行われた84時間耐久レース「マラトン・デ・ラ・ルート」に挑戦した。このレースは、生産車のスピードと耐久性が競われる文字通りのマラソンレースで、ポルシェ・ランチア・BMW・SAAB・オペル・シムカ・ダットサンなどと激戦を展開した。結果は、完走を果たすのみならずポルシェ・ランチアに次ぐ総合4位(順位は84時間後の走行距離で決められる)入賞となった。参加59台中、完走はわずか26台であった。
コスモスポーツに搭載された10A型エンジンは、それ以降ファミリアロータリークーペ、サバンナRX-3などに搭載された。10A型エンジンは5枚のハウジング構成から出来ており、開発目的がスポーツカーである為、エンジンは0813
13 101cの2台のローターハウジング迄含み全て総アルミニウム合金であった。コスモスポーツ以後の量産モデルでは、サイドハウジング(F・インターミディエイト・R)が鋳鉄に変更されている。コスモスポーツの10A型エンジンは炭素鋼が溶射されており高価かつ手の込んだものであるのに対し、10A型エンジンより後のエンジンでは、特殊鋳鉄を高周波焼入れ加工したものが採用され、量産化・低コスト化が図られている。また、加工法もコスモスポーツの砂型鋳造に対し金型鋳造とされ、大量生産された。
コスモスポーツは、前期型(L10A型)が1967年に343台販売されたのを皮切りに、1972年までに後期型(L10B型)の最終販売車までの累計で1176台が販売された。コスモスポーツは後進のロータリーエンジン搭載車の礎となったモデルである。1975年のコスモAPの登場まで、後期型(L10B型)の販売終了によって一旦コスモの名が途絶えることとなった。
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